鎖つき鉄球というフィクション

趣味語り

 数学的な美しさを持つ見事な球でありながら、原始の武骨さを感じさせる武器

鎖つき鉄球

 個人的に大好きな武器です。伝説や聖なるor呪われているなどの豊かな肩書が与えられる剣とは違い、それに頼らずとも立派にフィクション感溢れているところが特に愛おしい。
 そう創作物におけるファンタジーな武器としての「鎖つき鉄球」 彼らがとても面白い。
 現実ではフレイルや流星錘または狩猟道具が該当するのでしょうが、創作物における「鎖が背丈並みかそれ以上に長い」「鉄球が人の頭部もしくは身体まである非常識な大きさ」をもとに考えます。

フィクションにおける彼ら

 フィクションだと先のフレイルと流星錘をくっつけたような「持ち手から非常に長い鎖が伸びて鉄球と繋がっている」もしくは「鉄球と鉄球(もしくは他の武器)を長い鎖が繋いでいる」形が多くあります。
 前者がメジャーでしょう。
 有名なのはガンダムシリーズにおける鎖つき鉄球。ビームとか撃っているのに、急に無骨な塊を使うというインパクトが使用回数の少なさに反して印象に残りやすい。ビームの鎖や超硬ワイヤーといったSF技術の粋を使って原始的な武器を扱うギャップとアンバランスは技術のユニークさを感じられて面白い。
 後者は狩猟道具にある石と石を繋いで投擲するモノを動物の脚や羽が絡まるようにする機能は全くあらず、一発を外したらもう片方でカバーする攻めの姿勢が強い。
 有名どころでは、横山光輝先生の「三国志」に登場する「甘寧一番乗り」が印象的な「甘寧」が使うモノや鬼殺の刃に登場する「悲鳴嶼行冥」というキャラが棘つき鉄球と手斧を繋いでいました。
 どちらも戦い方はダイナミックで、一撃が必殺とパワフル極まりない。

デザインについて

 鉄球部分がシンプルな丸型もあれば、棘をつけている場合もあります。
 凶暴性のアピールや使い手とのギャップ(大抵は少女や女性の場合が多い)を演出に棘つきが使われますね。
 個人的にデザインで納得したのが、仮面ライダーシリーズ「仮面ライダーX」に登場する怪人「鉄腕アトラス」が用いる地球型の鉄球。
 威力になるわけじゃないですが、モチーフになったギリシャ神話の神に沿ってデザインしてあるのは見事でした。

劇中における役割

 引き立て役として便利。

 筋骨隆々な戦士が振り回す! 可愛い女の子が軽々と振り回す! そして圧倒的な破壊をもたらす!
もしくはその鉄球を受け止める敵の脅威! または主役やメインキャラの頭脳を披露する舞台装置! かませ犬と化すパワーキャラ!

 そんな「力」に関する表現に鎖つき鉄球が出番です。
 ただ力というジャンルでは「ハンマー」という、これまた武骨で強力なライバルがいます。役割もほぼ同じ。
 殺陣のしやすさで考えるとハンマーに分がある? もしくは大剣に取られそう。

 他では複数人で相手を囲み一斉に投げて捕らえるみたいな使い方をされていたりします。ただ分銅とかぶるので、時代設定や世界観で変わります。日本の時代劇では分銅ですね。
 この使い方もまぁ、かませになりやすい。大抵は抑えられずに投げ飛ばされたりと。

 こう考えると引き立て役というジャンルもライバルが多いのだなぁ……

振り回し方いろいろ

 オーソドックスに手元でくるくると回転の勢いをつけてからぶつける。王道ともいえる振り方でしょう。
 ハンマー投げの要領で本人もぐるぐる回って相手にぶつける。アクションゲームでやられるとしゃがんで対処される系ですね。

 気になるのは、よく見るけどフィクション的な動き「真っ直ぐに相手へ飛ぶ」というのがあります。タイミングが合えば真っ直ぐにいくでしょうが、シビアに思えてならないし振り下ろす方が威力があるでしょう。
 掴んで野球のように投げるというやり方もありますが、理に適う分迫力が欠けてしまう。
 その違和感を解決してなおかつ強さを感じさせるのが「発射式」
 火薬なり電磁なり方法は様々ありますが、綺麗に真っすぐに相手へ向かいます。勢いはむしろ振り回すよりある場合も。
 この方式を使うのはロボット作品でしょうか。手や肩から発射するタイプ。

 変則的なのが、ウルトラマンシリーズに出てくる「殺し屋超獣バラバ」「暴君怪獣タイラント」
 どちらも棘つき鉄球の手からフックつき鞭を発射して、相手を捕えるまたは動作を潰す。もちろん鉄球で相手も殴る。
 そういう発想もあるとは、と感心させられました。

 ただ——どう考えても主役が扱う武器にはなれない。と、いうのがあります。
 恐らくですがこの部分

イメージの共感性が希薄

 主役になれない理由はこれだと思います。

 剣や銃は玩具でよくあります。遊んだ人もいるでしょう。
 なくても、棒みたいな長物を振り回したり小石なり輪ゴムで的当てをしたり。その延長で主役が使う剣や銃に対して「上手い・下手」「強い・弱い」と感情を移入しやすい。

 しかし、鎖つき鉄球————フィクション純度が高く、あんなの現実で使えねーと脳裏に走る。そうなると一気に感情移入が抜けます。

 だから、共感が求められる主人公には似合わないのかもしれない。

 故に落ち着くのは「名脇役」なのでしょうね。

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